shigureinnのブログ

社会学を学べなかった私が倫理のおべんきょー

【毒所感創文】デレク・パーフィットの『理由と人格』 序

はじめに

 デレク・パーフィットの『理由と人格』という本をご存知だろうか。

 知的な読者の方なら名前くらい聞いたことあるかもしれないが、読んだことがあるという方はそんなにはいないだろう。というのも、この本はかなり高価である。定価が1万円で、高いといわれるロールズの『正義論』(7500円)よりも高い。図書館などで借りられるなら良いが、なかなか自費で買おうとは思うまい。まあ、私自身が本を手元に置いておきたいタイプの人間だから、高価で買えない本は読まないという前提を持っているのだが、それは早計なのかもしれない。本は借りられれば良いと思う方やそもそも英語で読める方なら、高価な邦訳版に手を伸ばしにくいという問題はクリアできる。

 ところが、まだ問題は残っている。聡明な方ならすぐに思い至ることだが、この本、とても文字数が多いのだ。ページ数自体はだいたい750ページなので、まだ良心的なのかもしれないが(ほんまか?)、なんと段組みが上下二段に分かれているのである。わざわざ文字数を計算したりはしないが、全体で相当な文字数になることは想像に難くない。この量だと読み切れるか不安になってしまい、ますます買いづらい。私もそう思っていたし、現に買おうとはしていなかった……。

 が、Amazonの欲しいものリスト機能を利用してこの本を送ってくださった方がいて、幸運にもこの本を手にすることができた。その方への感謝を込めて、読書感想文を認めようと思う。

 以上が、『理由と人格』の読書感想文をこれからゆっくり書いていく経緯である(長い! 結論を先に言いなさい!)。

  なお、勝手に原文(基本的に訳文だが英語の原文も引っ張るかも)をそのまま引用するときは引用の形式を取るが、私が要約したり勝手に文言を変えたりする場合は、時の文に斜体で書く(余裕があれば参照ページはつけます)。

 また、このブログを書いている私ではない"I"や読者ではない"You"は、なるべくわたしあなたという表記で区別できるようにするつもりである。

 適当に読んで適当に思ったことを書くので、興味ある方はしばしお付き合いいただきたい。感想をコメントしたりTwitterで呟いたりしてくださると、非常に嬉しい。検索用にタグが欲しいところだが、いいものが思いつかないのでとりあえず「#毒所感創文」を付けていただけると、エゴサで引っかかるかと。

 

この本の主題について

 この本には目次より前に「序」がある。軽い気持ちで読み飛ばしたくなるかもしれないが、ここをそんな気持ちで読み飛ばしてはいけない。ここでこの本の主題をある程度理解する必要がある(と、私は読んでいて思った)。

 どうやらこの本には二つの主要な主題があるらしい。その一つ目は以下である。

本書の主要な主題の一つは、われわれがなすべき理由を持つことに関する一連の問題である。*1

タイトルの「理由」は、このテーマを示している。

 となると、もう一つの主題は「人格」だと予想できるはずだ。実際そうであった。人格の主題は以下の問題である。

・個々の生の統一性=何によってわたしは生涯を通じて同一人物であるのか

・別々の生の間の相違=わたしあなたが個別の生を生きることから何が言えるか

・別々の人格の間の相違=何によってわたしあなたが違うのか

・これらの事実のどこが重要か

  と、理由と人格について述べた後、その関係が密接であるとパーフィットは述べる。人格に関してわれわれの信念は間違っており、その信念をただすことによって理由に関する信念(道徳理論および合理性理論)を変えることになるらしい。

使用される概念について

 使用される概念について序で説明する気はないと著者は述べており、本当に説明してくれない。しかし、用いる概念の名前は出してくれている。今後何度も登場する概念を今のうちに把握しておくのは、たとえざっくりとした把握であったとしても悪くないはずだ。以下の概念が紹介され、所与のもののような扱いを受けていた。

reason for acting=われわれの行動には理由がある

ought=われわれはある仕方で行動すべきである

morally wrong=ある行動の仕方は道徳的に不正である

good or bad=ある結果は道徳的によいか悪いかどちらかで、悪い結果は防ぐべきだ

self-interest=自己利益

best for this person=この人物にとって最善

person=人格

所感

 当たり前だが、序なのでこれだけだと何とも言えない。この本は、議論を一個ごとに分けて書いてくれているので、今後は議論ごとに記事立てして書いていきたいと思う。

 

*1:ⅲページ上段